「暴走するバイオテクノロジー」 天笠 啓祐 著 読書ノート 24/10/21
山中伸弥教授がノーベル賞をもらう前に読んだのですが、とても勉強になりました。
表紙 帯より「福島事故は人類に対して重要な真実を突きつけた。それは『制御できない技術システムは、想像を超える危険性をはらむ』ということだ。世界中の科学者、大企業、さらに為政者がバイオテクノロジーに熱い視線を注ぐ。しかし『生命操作』はまさに『制御できない技術』なのだ。《第二の原発》を生まないためにも、まずはその実態を見てみよう。」
「幹細胞とは、細胞のもととなる細胞のことで、血液をつくりつづける造血幹細胞などがある。多能性、増殖性、修復性といった性質をもっている。幹細胞の修復能力を利用して皮膚などの再生をおこなうのが、これまでの『再生医療』である。iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、体細胞の幹細胞から作り出す細胞分裂が止まらない細胞である。ES細胞と似ているが、受精卵から作り出されるわけでないため、(倫理的問題をクリヤー)あらゆる組織や臓器に分化させるには、手数がかかった。…遺伝子組み換えに用いるベクター(遺伝子の運び屋)に、主にマウス白血病ウィルスが用いられているため、一歩間違えると白血病になる可能性はある。しかも、この細胞は無限に増殖する能力を持っている。この増殖能力は発癌性と紙一重とみられているため、臓器移植の後に癌化する恐れも指摘されている。さらに、iPS細胞自体、あらゆる臓器や組織に分化する前の未分化の細胞であることから、その未分化な状態が残ると、一歩間違えると人間としての体の機能を奪う可能性がある。いずれにしろアクロバットな技術であることは間違いない。ES細胞もiPS細胞も、再生医療という名の下で、人体部品を作ることを目的にしている。人体部品工場づくりの流れは、止まることがない。行く先には、その部品を組み合わせた『サイボーグ人間』が待っている。…生命を扱う科学者の世界は、歯止めを失い、より危うい世界へと入り込んでいるのだ。」
「遺伝子治療とは遺伝子を治療するのではない。細胞に(別の)遺伝子を導入すること。未だに人体実験の域を出ていないのである」
「遺伝子組み換え魚・2m鮭が出回りそうである。もし環境中に逃げたら、海洋生態系にどんな影響がでるか?」 「クローン技術は、受精の仕組みに人間が介入して操作するのだが、家畜の場合、大きく分けて、遺伝的に同じ兄弟姉妹を作り出す受精卵クローン技術と、遺伝的に同じ親子を作り出す体細胞クローン技術がある。受精卵クローン家畜はすでに食品として認められ、日本でも流通している。体細胞クローンは、通常の生殖を経ないで、遺伝的に同じ生命を作る技術である。死産・生後直死が多く、異常が多い。…いずれにしろ、生命の不思議さが体細胞クローン技術を受け付けないことだけは確かである。」
「種子の67%は10の多国籍企業が独占している。中でも23%を占める米国モンサント社は遺伝子組み換え作物によって世界制覇をもくろむ。その後押しをするのが米国政府とビル・ゲイツ財団だ。」
「2008年に世界銀行が出した『これからどのような農業に投資をしていったらよいか』をまとめた調査報告書では、GM(遺伝子組み換え)作物に未来はなく、有機農業など環境保全型農業に投資すべきだと結論づけた。本来、米国政府や多国籍企業の味方のはずの世界銀行が、GM作物を見限ったのである。」
「バイオテクノロジーの応用は、人間の生殖にも手を加えてきた。・倫理面で慎重さを求められたが、技術は倫理を押し退け進んできた。最初は人工授精だった。1970年代後半から『体外受精』だった。・さらに、その受精卵を利用して新たに、あらゆる組織や臓器に分化する潜在能力を持つと考えられている、ES細胞(胚性幹細胞)が作られた。これは受精卵から取り出した、細胞分裂を続けている細胞で、万能細胞とも呼ばれる。しかし受精卵を壊して作り出すため、倫理面で開発が進まなかった。そこで体細胞の幹細胞に遺伝子を組み換えて、ES細胞に似たiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作り上げた。」
再生医療開発競争の先端を走っていた韓国でそのトップを走っていた研究者黄禹錫(ファンウソク)が、体細胞クローン胚からES細胞を樹立した、と発表した。記念切手・銅像までできたが、捏造が明らかになり、懲役2年の有罪となった。「研究が経済の論理の下におかれ、強引な技術開発が広がっているからである。」 「プライバシー侵害、第三世界の収奪、実際の診断や治療ができなかったり、差別や優生学の台頭などといった問題を引き起こしながら、特許権確保を目的に、遺伝子探しが進められてきた。過熱化するバイオテクノロジーでの競争は、生命を弄んでいるとしか思えない情況を拡大した。」
☆ 韓国では、バイオの超一人者学者が詐欺論文で懲役2年となり、日本ではアホな森口君がアホな読売によってひと時でも寵児にされるという、ヤバイ・アクロバットなバイオの学界、医学界、薬剤業界ですね。運良く中山教授が清廉潔白・努力の人だったから良かったのでしょう。倫理上問題なく、且つ安全性が確認できなければ、臨床応用してはならない、はずです。
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