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「地方消滅の罠」 山下裕介 著     読書ノート

◎「2040年までに全国の市町村の半数が消滅する」とぶちあげ、「すべての町は救えない」と煽って衝撃を与えた日本創生会議の「増田レポート」。だがその警鐘にこそ、地方を消滅へと導く罠が潜んでいる。「選択と集中」などという論理を振りかざす本当の狙いは何か。「棄民」への政策転換がなされたようにみせかけているのはなぜか。限界集落問題が「つくられた」ことを示して話題になった社会学者が、増田レポートの虚妄を暴き、地方を守るために必要な論理と、再生に向けた道筋示す。-裏表紙より
・人口減少が社会の活力を低下させ、さらに人口を減少させる― 私たちが陥っているこの悪循環は、経済や財政の悪化によるものというよりむしろ、社会的要因や心の問題によるものというべきだ。心理的要因が、社会や経済や財政の動きと絡まり合ってこの人口減少という事態につながっている。☆?
・要するに子育てには、経済力以前にゆとりのある時間の創出が必要なのである。・家庭からの労働力としての人員の放出が家族の時間を奪い、出生率を下げている可能性のほうが高い。そうした状況で雇用を増やしても、さらに出生を妨げるだけでないか。…失業率の高い沖縄が全国一の出生率・発展途上国の人口増加への説明。
・要するに、「出生」は、経済のみで決まるものではなく、家族・夫婦・人生のあり方できまるものだ。晩婚・子供の数…これらは人生設計のあり方そのものである。「経済力」はこれらを決定する重要な変数ではある。しかしそれはつねにプラスに働くとは限らない。逆に人生設計とは背反さえする。…経済と暮らしはバランスよく構成されていなければならない。そのバランスを欠いたことが出生率の低下の原因である。・首都圏と地方での出生率の違いを☆考えるとわかる。
・心理的要因― 結婚し子供を育てること、絶対に必要なことは、・未来に対する安心感である。…心理的要因に次ぐもう一つの人口減少の要因は、家族を含めた社会的環境の変化である。…核家族化が親がいないで負担、子供の面倒を見てくれる近隣無し…☆終戦後バランスあったんかいな?
・そもそも経済力・雇用力で出生力が決まるものならば、東京で出生率が高くなっていなければならないはずだ。一般に農村・地方のほうが出生率が高く、大都市・首都圏で低いという事実を認めるなら、
人口を集めるべきは地方中核都市ではないはずだ。地方中核都市からさらに地方の中小都市へそしてさらには農山村漁村へと押し戻すことが本来あるべき方策である。その方が効果的であり、また理想でもある。 ☆グローバルな経済に勝てるかな!
・…増田レポートのように①雇用をつくる、②働くための子育て環境を整える、で対応しても…かえってそのために、さらなる経済発展にみなが貢献せねばならず、ますます暮らしは忙しくなり、方策は逆効果をもたらすに違いない。☆そういう面もありますが。 
・経済の論理はもはや暮らしと簡単に折り合わなくなっているから、そこにこそ調整が必要なのだが、この国の国民はこうした事態においてもなお自己犠牲を厭わぬ性格でもあるようだ。なおも働き、文句もでない。☆そして子供が生まれない。
・…地域に住む人々自身が問題を認識し、その解決を考え実践していくことから始まるはずだ。
・…地域の中で問題解決過程がしっかり起動していくためには、現在のような補助金行政や中央主導の大規模公共事業牽引型の地域再生論から脱却するだけの、自立と自治の確立が必要だということでもある。…「グローバルな競争の中でこの国が優位に立つためなら、地域など消し飛んでも仕方がない、いや場合によってはそのほうが好都合…地域消滅になっても『カネになるからよいだろう』と受け入れることさえあるかもしれない。…
・この提言(増田レポート)には、どこかにショックドクトリン(危機や非常事態に便乗した改革)を狙っている嫌いがある。国民やマスコミ、さらにはもしかすると政府や国会さえ危機に煽られて、「これしかない」と思われされたり…。政府と相違があり、政府の論理はいまでも地方分権から出発しており…
・社会は経済と雇用だけで成り立っていのではない。
・出生率は暮らしに結びついているから、日本に暮らす人々の自治や自立の考え方そのものを取り戻すことによってしか、その回復には結びつかないだろう。-強権的な国家主義的手法ではダメということ
・人口減少問題を解くには、「多様性の共生」から発する「参加と共同」の実現こそが不可欠だ。…依存こそが不安の正体だとするならば、それを乗り越えるのは参加や共同でしかないはずだ。
◎ 問題解決型モデル事業の展開プロセス  ○ 問題解決は問題の全体像を知ることから
① 課題テーマの設定は小さな地域から  耕作放棄地・空家の活用と再生、等
② 問題解決へ向けた討議の場の設定―下から上までの総参加で
③ 客観的・中立的に問題点を解析し、徹底的に掘り下げて、最適解を見つける
◎ 増田レポート批判の旗印の一つ「ふるさと回帰」や「田園回帰」
・人口減少適応戦略とは、目の前に生じている人口減少・少子高齢化に地域で工夫し、乗り切っていきましょうというものだ。…こういった人口減少社会対応のインフラ再構築を試みる戦略である。・だがこれらの戦略が活きるのは、住民たちが誇りと自信と安心感を持って、自律的に社会の持続可能性を保っていることが前提である。
・小田切徳美氏曰く「増田レポートは2010年までのデータでやっていて、その後の大事な動きを反映していない」・いままさに芽生えはじめている大きな芽を、変なちょっかいを出されて踏みつぶされかねないことに、強い憤りを感じているようだ。またこの数年では、若い子育て夫婦が東日本大震災・原発事故を機に大都市圏から地方へと移住したケースが目立つようだ。若者の田舎暮らし志望のみならず、団塊の世代のふるさと回帰も並行している。
・増田レポートなどが前提としている、大都市にあこがれる若者という姿は、この平成世代にはもはや当てはまらないように筆者には感じられる。☆若者に前向きの意欲がないのでないことを、祈ります。
 …「本当は残りたい」にもかかわらず、「仕事がないのでやむなく東京に出る」というケースが明確に増えていった。
・しばしばこの二つの世代のジジババ孫コンビが、各地の地域づくりを引っ張っている例が目立って増えてきた。
・地方で、ふるさと回帰・田園回帰・地方回帰の傾向は間違いなく存在し、それにあわせて政策展開を試みていくことで、地方消滅を解消する道があることも確かだろう。
・安定社会を取り戻すことができるかどうかは、日本の歴史ある環境・社会・文化を家族や地域の再生を通じて引き続き継承し、…体制を持続可能な形で世代転換の中に再編成できるかにかかっている。それゆえ、その変革は地方に限らず、大都市も首都圏も、そして政府も国会も省庁もすべてが関わるものになるはずだ。要するに、もっと大きな革新が必要であり、それは明治維新以来突き進めてきたこの国の「近代化」路線の軌道修正なのだ。
・この地方への分散化を、「画一性への依存」をもたらす「選択と集中」によるのではなく、「自立」前提の「多様性の共生」で、できないか。これがこの本の主張である。       2015/2/18
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【山好き、旅好きの団塊世代日記】 当ブログは2007/1/29に運営開始いたしました!





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プロフィール

高田 学

Author:高田 学
少年時代は海と戯れ鎌倉育ち、故郷を離れ北海道で学業。その後東京にて工務店経営。
環境(省エネ)には特に詳しい。廃業後自由人。

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