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「空気」と「世間」鴻上尚史 著 2009年刊    読書ノート


はじめに、より「この本は、『空気』と『世間』の正体をなんとか突き止め、『空気』と『世間』に振り回されない方法を探るための本です」とのこと。著者が種々「世間」「空気」の本を読み込み、前向き評論の本。

・「お笑い番組の空気」、大物司会者がいないと「『空気』が混乱する」んです。
・作家の藤原智美述べる『現代の日本人はテレビでキャラの演じ方を学習し、日常生活では場面に応じて、キャラを選んで演じている』つまり「『空気を読む』とは、≪日常というテレビ番組」≫に出演するようなものだという」
・阿部謹也から引用『富国強兵政策の名のもと、わが国を強引に西洋化する過程で、国会や裁判所などの政府機関、税制、教育、軍政などの概念を国民に説明するためには、《社会》《個人》という単語が必要だった。…少なくとも文章のうえではあたかも欧米流の社会があるかのような幻想が生まれたのである。特に大学や新聞などのマスコミにおいて社会という言葉が一般的に用いられるようになり、わが国における社会の未成熟あるいは特異なあり方が覆い隠されるという事態になったのである。』
・「建て前としての『社会』と本音としての『世間』が日本に生まれた。…日本人は『社会』と『世間』を使い分けながら、いわば、ダブルスタンダードの世界で活きてきたのです。」☆政治家の失言は本音です。 
・「『それは理屈だ…それでは世間は納得しないだろう。もっと人間(☆世間)の事情や感情を考えろ』、『歴史的・伝統的システム』の中でよく言われる言葉『そこをなんとか』と言い返せてしまうところが日本人としての強み?なのでしょうか。」☆世間の事情を踏まえた正しい理屈があるのでは?

・鴻上さん著者の論「この『世間』が流動化して、どこにも現れるようになったのが『空気』なのだ」
・世間のルール①贈与・互酬の関係 ②長幼の序 ③共通の時間意識 鴻上さん追加 ルール④差別的で排他的…「逆に言えば、差別することで『世間』を存続させている…『順番に来るいじめ』は、じつは日本の特徴なのですが、もうひとつ、欧米に無いいじめ、それはクラス全体が一人の人間に対して、『何もしないいじめ』です。…そうやって差別し、排他的に振る舞うことで、自分たちは同じ『世間』に所属しているんだと確認するのです。欧米人には、この『クラス全体が一致して』という部分が、理解できません。」 ルール⑤神秘性…「それがどんなに非生産的・不合理だと思っても『昔からそういうやり方をしている』という一言で、その『しきたり』や『伝統』や『迷信』は守られるのです。…(俺みたいに)『世間』からはみ出している人からすれば、まったく根拠を発見できませんから、それは『迷信』と呼ばれるのです。」…「合理的、論理的な筋道が通らない場合、それは神秘的と言うしかないのです。」☆笑い。阿部さん呪術性と言う?

・阿部さんの中世の研究に対して「キリスト教というシステムがなければ、西洋もまた『世間』が続いていただろうという大胆な研究です。…この≪発見≫は『世間』に生きるコンプレックスを解き放ち、『世間』に対して、客観的に向き合うことができるきっかけを作った、という意味で本当に感動的なのです。」
・「教会が『世間』をつぶした」「神と『世間』の役割は同じ」…「人生の難問の前で震え、怯え、壊れそうになっている人間を支える―それが、神と『世間』の役割です。」
・また阿部さんから引用「このとき新しい近代的諸関係の中で取り残された伝統的人間関係は旧来の『世間』という枠組みに拠り所を求めるしかなかったのである…こうして『世間』は近代的諸制度の中で隠れた形で生き延びたのである。…の中で人々は家族と親族の絆を維持し、先祖供養の伝統をその関係の中で守り、新しい文明の中で自己の位置を守ろうとしていた。それらの総体がまさに『世間』という枠組みをなすことになったのである。」2005年「『世間』への旅」、☆ヌルイ?
・「五つのルールが明確に機能し始めた途端に、流動的で一時的だった『空気』は、固定的で安定した『世間』に変化します。…『世間』の判断を、将来にわたって共有し、維持し、同じ時間を生きるという保証が危ういと感じるとき、人は『世間』でなく、『空気』という言葉を選ぶのではないか…『空気』と言えば、『いつかは変わるのかな』と期待する人もでてきて、反発が抑えられるという処世術です。」☆さすが脚本家
・「山本七平さんは、色々な場面で、対象を臨在感的に把握し、そうすることで絶対化しそこに抵抗できない『空気』が出現するという事例をあげています。…『遺影デモ』と呼ばれるものの圧倒的な威力。…ただの写真、ただの言葉、ただの会議、ただの椅子、それらがそれらの存在を超えて、その背後に宗教的な・霊的な・神秘的ななにかが存在するかのように感じ、そして、そこから、圧倒的な『空気』が生み出され、それに従い、場合によっては振り回される。誰しも思い当たることがあると思います。」

・絶対化に対抗する相対的な視点……「アメリカから『ディベート』という方式が日本に入った時、多くの日本人は衝撃を受けました。それは、相対化の見事な見本だったからです。…『世間』は所与性。・自分の立場を、自分で180度入れ替えて主張するディベートという方式を、とても異質に感じたのです。彼らは(アメ公)、神のこと以外は、すべて、相対化の視点で語ることができるのです。神だけが絶対である…
・会議の決定と散会後の『飲み屋の空気』の結論とは別になる……「議論を拒否する『空気』の支配」
・「…そんな時、子供が『王様は裸だ!』と『水を差す』・その瞬間『空気』は一気に消える」☆大人だったら?
・「『空気』の世界は理屈のない世界…「…けれど、日本社会は、理屈ではない『空気』を選んだ」☆今の国会
◎『世間』が壊れ、『空気』が流行る時代
・中途半端に壊れている『世間』…「この数年でさらに激しく壊れている。」「NHKの『紅白歌合戦』流行らず-日本人の好みの多様化しただけ」「地域共同体という『世間』をゆるやかに壊した都市化」「会社という『世間』をゆるやかに壊した経済グローバル化」終身雇用無「精神的なグローバル化…若手社員の飲み会拒否…」
・快適さを知れば後戻りはできない…「『個人』であることをずっと求められて育った『帰国子女』…『個人』であることの明快さ、『世間』のルールを無視することの快適さを知ってしまった人に、」もとに戻れは無理。
・格差拡大の進む「アメリカでは、宗教が間違いなくセイフティーネットです。…(日本では)五つのルールの何かが欠けた『世間』か、『共通の時間意識』が揺らいだ『世間』が残っていて、それを『空気』と呼んで、自分たちを支えてもらおうとしている。…もはや『共同体』はもう一度撮り返すのは、不可能だと感じる。だからせめて『共同体の匂い』を感じたい。それが『空気』という言葉になるのだと思うのです。」
・「『共同体の匂い』を感じるだけでも、人は元気になります。・逆に言えば、不安な人ほど『共同体の匂い』を求めるということです。…『共同体の匂い』は、例えば、マスコミが作り上げます。」
・「世間原理主義者」の登場― 「『共同体の匂い』だけでは自分をささえきれない、激しく不安な日本人、不安であればあるほど、『世間』の原理に戻り、強力な『世間』を作り上げようとする、米国の福音派の人達と同じように、極めて分かりやすい、誰もが発言できる『世間』を選ぶのです。『古き良き日本』という『世間』です。」『古き良き日本』はイメージであり、☆山本さんの言う、教義・ドグマはありません。矛盾だらけ。
・「世間」の逆襲― 「一方で壊れながら、一方で蘇りつつあります。・『世間』の復活の後押ししたのは、マスコミとインターネットという存在と、もうひとつ『資本主義の中世化』『あらたな身分制度の登場』です。
・「世間」を感じるために他者を攻撃する…… 
・「日本人が『共同体』と『共同体の匂い』に怯えず、ほんの少し強い『個人』になることは、じつは、楽に生きる手助けになるだろうと僕は思っています。…もし『個人』が強くなれる理由があるとすれば、そのほうが快適だからです。じっと『空気』に押しつぶされてガマンするより、『王様は裸だ』と叫ぶ方が快適だからそうするのです。『前向きの不安』と『本物の孤独』を手に入れれば、『個人』であることはずいぶん快適になります。」
鴻上尚史1958昭和33年8/2愛媛・新居浜市生まれ 早稲田法学部卒 脚本・演出家、テレビ等の出演多し
    「孤独と不安のレッスン」等 エッセイ・評論の著作も多い。マルチタレント
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【山好き、旅好きの団塊世代日記】 当ブログは2007/1/29に運営開始いたしました!





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プロフィール

高田 学

Author:高田 学
少年時代は海と戯れ鎌倉育ち、故郷を離れ北海道で学業。その後東京にて工務店経営。
環境(省エネ)には特に詳しい。廃業後自由人。

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