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「私の個人主義」夏目漱石 講演  大正3年11月学習院にて      読書ノート

「・・・留学を断ろうと思った・・何の目的を持たずに、外国へ行ったからといって…(しかし)命令通り英国へ行きました。しかし果たせるかな何もすることがないのです。」☆この煩悶することが、役にたったのですと人は言う。
「とにかく3年勉強して、遂に文学はわからずじまいだったのです。私の煩悶は第一此所に根差していた・・私はそんなあやふやな態度で世の中に出てとうとう教師になった、されてしまった・・・教育者であるという素因の私に欠乏している事は始めから知っていましたが、・・・同じ不安を連れて松山から熊本へ引っ越し、また同様の不安を胸の底に畳んで遂に外国まで渡ったのであります。」

「いくら書物を読んでも腹の足しにはならないものだと諦めました。同時になんのために書物を読むのか自分でもその意味が解らなくなって来ました。この時私は始めて文学とはどんなものであるか、その概念を根本的に自力で作り上げるより外に、私を救う途はないのだと悟ったのです。今までは全く他人本位で、根のない浮き草のように・・・他人本位というのは、自分の酒を人に飲んでもらって、後からその品評を聴いて、それを理が非でもそうだとしてしまういわゆる人真似(ヒトマネ)を指すのです。・・ベルグソンでもオイケンとやかくいうので日本人もその尻馬に乗って騒ぐのです。ましてその頃は西洋人の言う事だと言えば何でも蚊でも盲従して威張ったものです。」☆まさに今の誰かにあてはまります。

「・・・西洋人の作物を評したのを読んだりすると、その評の当否はまるで考えずに、自分の腑に落ちようが落ちまいが、むやみにその評を触れ散らかすのです。つまり鵜呑みといってもよし、・到底わが所有とも血とも肉ともいわれない、余所余所しいものを我が物顔に喋って歩きのです。・・私にはそう思えなければ、到底受け売りすべきものではないのです。私が独立した一個の日本人であって、決して英国人の奴婢ではない以上はこれ位の見識は国民の一員として具えていなければならない上に、世界に共通な正直という徳義を重んずる点から見ても、私は私の意見を曲げてはならないのです。」☆いいですねえ・・・

「一口でいうと、自己本位という四字を漸(ヨウヤク)く考えて、その自己本位を立証するために、科学的な研究や哲学的思索に耽けだしたのであります。・・私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。今まで茫然と自失していた私に、此処に立って、この道からこう行かなければならないと指図をしてくれたものは実にこの自我本位の四字なのであります。・・そう西洋人ぶらないでも好いという動かすべからざる理由を立派に彼らの前に投げ出して見たら、自分もさぞ愉快だろう、人も喜ぶだろうと思って、著書その他の手段によって、それを成就するのを私の生涯の事業としようと考えたのです。」

「・・・どうしても、一つ自分の鶴嘴で掘り当てる所まで進んで行かなくっては行けないでしょう。・もし堀りあてる事が出来なかったなら、その人は生涯不愉快で、始終中腰になって世の中にまごまごしていなければならないからです。・・・それはとにかく、私の経験したような煩悶が貴方がたの場合にもしばしば起こるに違いないと私は鑑定しているのですが(☆今の学習院の学生ではありえません)、もしそうだとすると、何かに打ち当たるまで行くという事は、学問をする人、教育を受ける人が、生涯の仕事としても、あるいは10年、20年の仕事としても、必要じゃないでしょうか。ああ此処におれの進むべき道があった!こういう感投詞を心の底から呼び出される時、あなたがたは始めて心を安んずる事ができるのでしょう。・・・腹の中の煮え切らない、徹底しない、ああでもありこうでもあるというような海鼠(ナマコ)のような精神を抱いてぼんやりしていては、自分が不愉快ではないか知らんと思うからいうのです。(☆自己本位の極意か?) 
「・・・上流社会の子弟・・換言すると、あなた方が世間に出れば、貧民が世の中に立った時より余計権力が使えるという事なのです。・・・権力とは・自分の個性を他人の頭の上に無理矢理。に圧し付ける道具なのです。権力に次ぐものは金力です。・・して見ると、権力と金力とは自分の個性を貧乏人より余計に、他人の上に押し被せるとか、または他人をその方面に引き寄せるとかいう点において、大変便宜な道具だといわなければなりません。こういう力があるから、偉いようでいて、その実非常に危険なのです。」
「・・・しかし自分がそれだけの個性を尊重し得るように、社会から許されるならば、他人に対してもその個性を認めて、かれらの傾向を尊重するのが理の当然・・、自分が他(ヒト)から自由を享有している限り、他にも同程度の自由を与えて、同等に取り扱わなければならん事と信じる・・。いやしくも公平の眼を具し正義の観念を有つ以上は、自分の幸福のために自分の個性を発展して行くと同時に、その自由を他にも与えなければ済まん事だと私は信じて疑わないのです。」「いやしくも倫理的に、ある程度の修養を積んだ人でなければ、個性を発展する価値もなし、権力を使う価値もなし、また金力を使う価値もないという事になるのです。・・貴方がた(☆学習院の金持ち子弟)はどうしても人格のある立派な人間になって置かなくては不可(イケナ)いだろうと思います。」

「私は英吉利(イギリス)を好かない・・しかし彼らはただ自由なのではありません。じぶんの自由を愛するとともに、他の自由を尊敬するように、子供の時分から社会的教育をちゃんと受けているのです。」
「個人の自由は先刻お話した個性の発展上極めて必要なものであって、・・どうしても他に影響のない限り、僕は左を向く、君は右をむいても差し支えない位の自由は、自分でも保持し、他人にも付与しなくてはなるまいかと考えられます。それがとりも直さず私のいう個人主義なのです。」
「警視総監(☆現総理は?)にそれだけの権力はあるかも知れないが、徳義はそういう権力の使用を彼に許さないのであります。」☆徳義って何?徳義とは何かで色々の哲学があるんで、すっきりしません。
「私の述べる個人主義は・他の存在を尊敬すると同時に自分の存在を尊敬するという解釈で・・・党派心がなくって理非がある主義なのです。朋党を結び団隊を作って、権力や金力のために盲動しないという事なのです。それだからその裏面には人に知られない淋しさも潜んでいるのです。」☆核心の思いかな?

「私は意見の相違は如何に親しい間柄でも、どうする事も出来ないと思っていまし・・。個人主義は人を目標として向背を決する前に、まず理非を明らめて(明らかにして)、去就を定めるのだから、或る場合にはたった一人ぼっちになって、淋しい心持がするのです。それはそのはずです。槙雑木でも束になっていれば心丈夫ですから。」☆庶民は、槙雑木?上から目線ではイケマセン!高踏派夏目漱石です。

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【山好き、旅好きの団塊世代日記】 当ブログは2007/1/29に運営開始いたしました!





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プロフィール

高田 学

Author:高田 学
少年時代は海と戯れ鎌倉育ち、故郷を離れ北海道で学業。その後東京にて工務店経営。
環境(省エネ)には特に詳しい。廃業後自由人。

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