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「近代日本150年」-科学技術総力戦体制の破綻―  山本義隆 著  読書ノート

・明治維新1868年、150年経って、今年2018年です。
・「…『産軍学複合体』は、20世紀における『科学の体制化』のさらに進んだ形態として、21世紀の『リバイサン』として、私たちの前に登場している。このような背景のなかで、科学技術の進歩とそれに支えられた経済成長が無条件に良いものであるという、近代社会を推進してきた価値観に、全世界的に疑問が投げられ始めたのであった。そして今、科学技術の破綻としての福島の原発事故、そして経済成長の終焉を象徴する人口減少という、明治以降初めての事態に日本は遭遇している。大国主義ナショナリズムに突き動かされて進められてきた日本の近代化をあらためて見直すべき決定的なときがきていると考えられる。そういう思いから捉えなおした近代日本150年の歩みである。」
・日本で大国であった中国がアヘン戦争で英国に敗れ、「幕末から明治初期に欧米列強に接し、軍事力と経済力の落差を思い知らされた日本の支配層は、絶えず成長しなければ国家として生き残れないという強迫観念を植え付けられた」
・「…福沢諭吉にとって、…実用性にその価値を見出す学門観こそが、明治の初めに日本が西欧科学を受け入れたときの基調であった。…今日に至るまでの日本の科学教育は、世界観・自然観の涵養によりも、実用性に大きな比重をおいて遂行されることになった。日本が近代化に素早く成功した一つの理由でもあるが、それはまた、日本の近代の底の浅さの原因でもある。…福沢自身、その過大なる科学技術幻想に囚われていたのであり、その幻想は、以後150年にわたって日本を呪縛することになる。」
・「…そのような大企業と工部大学校出のエリート技術者だけで産業革命が遂行されたのではない。…在来の職人や大工や鍛冶師らの中からも、輸入技術と在来技術の折衷型の、あるいは模倣型の技術が生み出されていた。…豊田佐吉に代表されるような『草の根発明家』登場していた」
・女工哀史の頃…「日本紡績の深夜業は…昭和のはじめに至るまで、日本中の紡績工場で行われ…、福沢は、この非人間的な労働の実態を、国際競争における日本の利点として評価していたのだ。…明治期における外貨獲得の優等生たる製糸業、そして日本の産業革命を代表する紡績業は、すくなくとも明治の後半には、ともに『ウルトラ・ブラック企業』であった。…電力証明による労働時間の延長…」
・足尾銅山鉱毒事件…「福沢の『実業論』では、この足尾銅山が日本における電気利用の最初に挙げられている。…日本で初めての電解精銅…古河鉱業の経営の先駆性…渋沢栄一の援助… 足尾の近代化はエネルギー革命によって、そしてエネルギー革命のために勧められたのである。それとともに足尾銅山こそは、明治におけるもっとも深刻な公害の元凶であった。
・「…谷中村は、村民の反対にもかかわらず滅亡させられた。官民挙げての『国益』追求のためには、少数者の犠牲はやむをえないというこの論理は、その後、今日に至るまで、水俣で、三里塚で、沖縄で、そして日本各地で、幾度も繰り返され、弱者の犠牲を生みだして来た。」
・「日本の急速な資本主義化は、開国と近代科学技術習得開始のタイミングの良さ、国家の強力な指導、進取的な経営者の出現、江戸時代以来の民衆の識字率の高さ、能力も意欲もある士族の子弟がその能力を発揮せしめる効果的な教育制度の形成、さらに在来職人層からの『草の根発明家』の誕生、等々をその原因として挙げられるが、それとともに農村労働力の過酷な収奪と農村共同体の無残な破壊を不可欠の因子として遂行されたのであることを指摘せざるをえない。」
・「福沢諭吉…『文明開化』という言葉の裏には、劣等感がこびりついていた…欧米に対する劣等感が近代化に立ち遅れた他のアジア諸国に対する優越感-『蔑亜』の心情に転化する…⇒『脱亜入欧』…日清戦争をへて、日本は1890年代に始まる本格的な世界分割競争に最後のメンバーとして仲間入り…」
・「…そのため軍が鉄道網の全国的統一を主張し…、軍事から始まった造船…、軍需を中心とする八幡製鉄…、大容量の水力発電、1914年猪苗代発電所…蒸気動力より電気へ…1910年代中頃第一次大戦始まりの頃が、エネルギー革命をともなった日本の産業革命の完了と考えられる。…「日本の近代化学工業は、軍による火薬・爆弾の自給化政策から始まった。……かくして第一次大戦は軍備の近代化と戦争形態の国家総力戦への移行という二つの側面から軍部を揺り動かしてた。そして化学工業の育成とならんで陸軍が最初に動いたのは、自動車産業の育成であった。…とりわけ窒素を扱う肥料工場はそのまま爆薬工場に転換しうるのであり、肥料産業は『国防産業』なのだ…
・「戦争に向かうこの時代に、国家経営の合理化という意味での近代化を推進した勢力は、軍と官僚機構であった。…資本主義国家は、一国社会主義の計画経済をある意味では手本にして、経済にたいする国家の介入を強めていった。それがドイツの国民社会主義(ナチズム)であり、アメリカのニューディールであり、日本の統制経済であった。」「国家の政策に影響を及ぼすことを志向した専門技術官僚の組織的な登場を迎える」
・「総力戦体制への道」――「総力戦は、軍事と政治と経済の一体化を要求したのであった。・・・電力の国家管理…満州事変勃発の1931年、国は『電気事業法』を大幅に改定し、電気料金は届け出制から認可制にかわり、政府が決定することになった。電力の国家統制の始まりで、この時現在まで残る総括原価方式の原型が生まれる…電力の一元的国家管理が完成した。これをもって、官僚主導の統制経済の本格稼働とみることができる。…『革新官僚』は、自由主義経済がすでに限界に達しているのであり、・官僚による合理的で計画的な指導によって産業を発展させるべきとかんがえていたのであった。」
・もともと日本における科学技術研究が国家第一主義と実用主義を理念としていたのであるかぎり、国家の要請に従うことに抵抗があるわけもなく、その国家的要請に軍の意向が強く込められている限り、それは軍の要請にも無批判に従うことを意味している。」
・「『日本の近代化の悲劇は、…軍国主義の進展という社会的条件のもとでしか近代化が始まらなかったという点に求められるべきである。』(広重徹)
・「…狂信的な国家主義者による手荒な地均しで、戦争に向けての非協力の声が押し潰されたのちには、反知性主義は背景に退けられ、冷徹な科学と技術の合理性が前面に登場する。…軍と官僚は、自分たちのサイドで研究の方向づけとその能率化・合理化に手をつけたのである。」
・「軍と官僚による統制経済の実験は、植民地で始まっていた。…軍と官僚だけの『国家』・満州国…ソ連の計画経済とほとんど異なるところがない。とりしきったのは、『革新官僚』で満州国実業部次長であった岸信介である。」
・「『科学技術新体制』にたいして、物理学のドン長岡半太郎は、いち早く賛意、…日本の物理学のゴッドファーザー仁科芳雄は、陸軍の要請で原爆研究に従事…科学技術にとどまらず国家のすべての機能の戦争目的への従属と一元的指導を主張している。」
・「…研究費が保証されている限りで、大多数の研究者は、世の中のことに無関心であった。」
◎「総力戦と社会の合理化」-「総力戦体制は、研究活動や生産活動そして経済活動に能率化とそのための合理化を求めた、…人的資源の全面的動員にさいして不可避な社会革命を担った…、1941年食糧管理制度・小作農民の生活向上が図られた…、農村の小作人と都市の労働者、そしてサラリーマンや自営業者のあいだに過度の社会的格差があっては不都合だったのである。…国民健康保険の改革も同様…、雨宮昭一の言うように『総力戦体制下では現実に富を生みだし、労働する者が、相対的に地位を向上せざるを得ないのである。…1930年代の後半から40年代前半の総力戦体制によって、社会関係の平等化、近代化、現代化が進行した』」「大河内和一男は、…社会的システム全体の合理的編成を戦争がきわめて短時間に実現したこと・高く評価していた。『福祉国家=戦争国家』この大河内の評価について、山之内靖は『むしろ、もっとも合理的な思考に立って日本型ファッシズムに存在の根拠を与えるもの』と、…大河内も小倉もファッシズムへの協力を表明したのである。…、…総力戦・科学戦にむけた軍と官僚による上からの近代化・合理化の攻勢にたいしては抵抗する論理を持ち合わせず、管理と統制に簡単に飲み込まれていったのである。」
・そして戦後社会-総力戦の遺産-「…日本がそれまでの天皇制ファッシズムの国家から主権在民の民主国家へ生まれ変わった、とこれまで理解されてきた。しかし…1990年代になって・総力戦体制による社会の構造的変動とその戦後への継承と見る歴史観が、ポツポツと語られ始めた。山之内靖、また野口悠紀雄も『《日本型経済システム》は、戦時期に生まれたと考えることができる』と言う。戦時下で形成された金融と財政のシステムに依拠した官僚機構が現在も日本経済をコントロールしているという主張…」
・「歴史家サイドからは雨宮昭一が『総力戦体制によって変革された社会が存在していたことが、戦後、占領の前提になった。』、山之内の言うように『アメリカ占領軍の権力は、実際には総力戦体制化に整備された日本の中央集権的官僚機構と密接に連携し合い…民主化の動向を歪めていった。』のである」
・「『…日本の科学のこんにちの展開の基礎は戦争によって培われたのである。』・ここでも『日本の近代化の悲劇』は『軍国主義の進展という社会条件のもとでしか始まらなかったという点に求められる』という広重徹の指摘
・科学者の戦争総括――「…戦争協力への反省や、軍事研究に携わったことの悔恨を表明している者は、ひとりしていない。…自然科学者と技術者だけは誰からも責任を問われなかった。…戦争遂行にもっとも協力したはずの理工系の学者の多くは、戦後も、悪びれることなく発言を続けることができたのである。」
・「・軍人が敗北の責任を科学技術に押し付けるのは、責任逃れに他ならない。…原子爆弾の異次元の破壊力で…戦況を偽り、敗戦の受け入れを先送りしてきた責任をうやむやにして、民衆に敗戦をうけいれさせるための、願ってもない口実を戦争指導者に与えた」
・「『科学戦に敗北した』と言うとき、日本ができなかった原爆製造に米国が成功したということを前提に語られている。つまり、中国は目に入っていない。蒋介石の国民党軍にせよ毛沢東の共産党軍にせよ、経済力や技術力では、日本軍にははるかに及ばなかったが、にもかかわらず、日本軍は中国大陸の泥沼の中で身動き取れなくなっていたのである…中国に対する敗北に目をとざした日本は、同時に、アジア侵略の政治的・道義的責任に目をつむったのである」
・「すくなくとも理科系の学問では、多くの学者は、おのれ自身の知的関心に突き動かされ、あるいは自身の業績をあげることを目的に、研究している。他方で、国家が科学と技術の研究を支援しているのは、それが、経済の発展、軍事力の強化、そして国際社会におけるステイタスの向上に資するがゆえに、である。そのことが民主主義の発展に結びつくかどうかは、まったく別の問題、つまり政治の問題である。にもかかわらず当時、科学的合理性と非科学的蒙昧の対比が民主制と封建制の対比として語られることによって、科学的は民主的とほとんど等置され、科学立国は民主化の軸と見なされた。」
・「気象事業の一元化にせよ、電力の国家管理にせよ、食糧管理制度や健康保険制度の改正にせよ、あるいは科学動員にせよ、軍と官僚機構による総力戦体制はそれなりに『合理的』精神に導かれていた。そして軍人と官僚は、科学者や技術者と口をあわせて生産力の増強を語っていたのである。真の問題はその『合理性』が、侵略戦争の遂行に対してさえ向けせれること、・そして科学者はそれをほぼ全面的に協力してきたことにある。『合理的』・『科学的』であることが、それ自体で非人間的な道具ともなりうるのであり、そのことの反省をぬきに、ふたたび『科学振興』を言っても、いずれ足元をすくわれることであろう。それを私たちは、戦後の原子力開発に見ることになる。」
・「高度成長と公害」「大学研究者の責任」-…特に『学識経験者』と称され、官庁や業界に関わりをもつことの多いその教授たちは、企業サイドに立って、ろくに現地での調査もせずに、思いつきのような原因論を語る。…日本の公害の歴史は『専門家』と『専門の知』が企業や行政、総じて権力の側のものであったことを示している。…それぞれの分野で専門家を名乗る《専門家》が、事故原因の隠蔽や患者の切り捨てに手を貸してきた歴史…」
・「2014年、武器輸出が事実上全面解禁された… 軍需産業の重視は、日本を『戦争を望む国』へと誘うことになる。」
・「結局、物理学者は、『原子力平和利用』の幻想をかきたてて、官産の主導による戦後日本の原子力開発の露払いをつとめたことになる。」
・「NPT(核拡散防止条約)が発効する前年1969年に外務省の非公式組織、外交政策企画委員会によって作成された『我が国の外交政策大綱』には『…当面核兵器は保有しない措置をとるが、核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャル(潜在能力)は常に保持するとともに、これに対する掣肘を受けないよう配慮する。』☆原発はポテンシャル維持のため
・「2011年の福島の事故後、ドイツとイタリアは脱原発を宣言した。将来にわたって核武装をすることはないという国際的メッセージ…、2012/6/20参議院本会議で、『原子力基本法』に以下の条文が追加された。《前項の安全の確保については、…国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、おこなうものとする。》…2016/4月安倍内閣は《核兵器でも、必要最小限にとどまるものであれば、保有することは必ずしも憲法の禁止するところではない》と、閣議決定した。☆国防のため原子力技術・原爆を持つ、とさ。
・総括原価方式による電気料金設定・贅沢な宣伝費・マスコミ・御用学者、電源三法による自治体への交付金。結局、日本の原発建設は、政・官・産・学そしてメディアからなる原子力ムラの利害のためになされていた。…原発は①燃料としてのウラン採掘の過程から定期点検にいたるまで労働者の被爆の問題 ②運転家庭での熱汚染と放射線汚染という地球環境への重大な影響 ③使用後にはリサイクルはおろか人の立ち入りも拒む巨大な廃炉、さらに10万年にわたって危険な放射線を出し続ける使用済み核燃料の処分方法が未解決、つまり、民生用商品としては、致命的欠陥。…・「決定的な点は、そもそも安全性が実証されてない。…暴走を防ぐための緊急炉心装置が装備されているが、それが設計通りに作動するか実証」できない。
・福井地方裁判所2014/5/21、『…多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流失や喪失というべきでなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている』、裁判官は『国富』の概念の、根底的な転換を迫っている。
・「経済成長の強迫観念にとらわれた戦後の総力戦の破綻である」

◎おわりに― 「増殖炉開発計画の事実上の破綻と、福島第一原発の事故は、科学技術の限界を象徴し、幕末・明治以来の150年にわたって日本を支配してきた科学技術幻想の終焉を示している。」
・ラスト「かつて東アジアの諸国を侵略し、2度の原爆被害を受け、そして福島の事故を起こした国の責任として、軍需産業からの撤退と原子力使用からの脱却を宣言し、将来的な核武装の可能性をはっきりと否定し、経済成長・国際競争にかかわる低成長下での民衆の国際連帯を追求し、そのことで世界に貢献する道を選ぶべきなのだ」
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こんにちは!

【山好き、旅好きの団塊世代日記】 当ブログは2007/1/29に運営開始いたしました!





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プロフィール

高田 学

Author:高田 学
少年時代は海と戯れ鎌倉育ち、故郷を離れ北海道で学業。その後東京にて工務店経営。
環境(省エネ)には特に詳しい。廃業後自由人。

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