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「アイヌの法的地位と国の不正義」 市川守弘 著     読書ノート  

◎副タイトル 遺骨返還問題と<アメリカインディアン法>から考える<アイヌ先住権>
・帯より 「<アイヌコタン>は、江戸時代まで支配地域を持ち、代表者(長)がいて、訴訟手続きなどの法規範を持った《主権団体》であった。明治新政府はそういたコタンの権限を一方的に奪った-。
 先住権とは何か? アメリカで19世紀前半に<インデイアン法>が確立したのはなぜか?日本国の不正義を告発し、<アイヌ法>の確立を訴えた初の法学的アイヌ研究の書。

・「北海道浦河町杵臼墓地に埋葬されていたアイヌの遺骨が、『研究目的』で掘り起こされ、大学の研究室に持ち去られた。北海道帝国大学は、戦前から戦後にかけて、北海道や樺太・千島などから1000体を超えるアイヌ遺骨を持ち去っていた。…形質人類学の研究のため、・・・さほど学問的な実績を残したものとはいえなかった。
・東京帝大教授・小金井良精、解剖学者、アイヌの頭骨研究は世界的にも注目されたといわれる。
・「1883年ドイツで優生学(☆ナチに繋がるやばい学問)、・・その後アイヌの人骨調査が行われる・・、児玉作左衛門をはじめとする北海道帝大の関係者とともに、昭和初期にアイヌ墓地を発掘してアイヌの人骨の収集を行った。・・『墓地発掘もまた優生学的思想の支配下にあったといえるだろう』(植木哲也)」
・「東京帝大、京都帝大では、琉球の遺骨まで発掘。・・・驚くことに1970年代まで行われていた。」
・「アイヌ墓地を無断で発掘し、埋葬されているアイヌ遺骨を掘り出す行為は、戦前でも刑法に触れる行為(墳墓発掘罪、死体損壊罪)であった。それでも研究者は、」屁理屈をこねて、発掘していった。

・幕末、「箱館奉行小出大和守(コイデヤマトのカミ)は、『墓暴きは重大な犯罪』と、…不平等条約まで結ばされる日英間の力関係の中で、アイヌの墓の発掘と遺骨の持ち出し行為(英国人)に対して、当時の幕府役人は毅然とした態度でイギリス人と交渉し、アイヌの人たちへの賠償金まで出させた・・・。幕末には絶対に許されない行為(12カ月の禁固刑)であった、ことが、明治になると学術的研究の目的が『錦の御旗』となり『許される』ことになっていった。」

◎浦河町杵臼居住アイヌ、2012年遺骨返還訴訟の提起
・最高裁判所の立場- 「墳墓や遺骨などが遺産分割されるのを防ぐため、・・選ばれた『祭祀承継者』のみ、相続されることとし、この897条の趣旨から、遺骨の所有権も祭祀承継者に属するとするのが判例となっている。つまり、遺骨は財産であり相続の対象だが、この遺骨を相続できるものは祭祀承継者一人であるとする。」
・「アイヌ遺骨に対する『祭祀承継者のみへの返還』という和人社会の道徳観を前提とする北海道大学や日本政府の考え方に対して、アイヌの人たちの遺骨に関する考え方は全く違っていた。 遺骨を誰が相続する、という発想もなく、…コタンという集落の人たちで埋葬し・・。 北大や政府の祭祀承継者でなければ返還しないという主張は、和人の家制度という考え方をアイヌ社会やアイヌの人々に押し付け、強制するものである。これは現代社会における遺骨に関する同化政策でしかない。」
・裁判所による和解勧告-『裁判所が適当と認める集団』に遺骨を返還する。「この和解は遺骨の所有者は祭祀承継者のみが有するとした従来の日本(和人)の法理論をアイヌの人たちには通用しないと宣言したことになる。重要!」
 「・・・身元不明の遺骨についても、掘り出された場所が明らかであれば、その地域のアイヌの集団に遺骨を返還する。という道を開いた。」
◎アイヌ集団(コタン)の権限-本書の課題  各地域に存在していたコタンの構成員の子孫からなる集団であり、この権限は『先住権』と呼ばれている権限であると考えている。とくに国が新たに『地域返還』を言い出し、一方的なDNA研究を是認する方向を強めている今、『先住権』という権限を明らかにすることは喫緊の課題である。」
◎国連総会、2007年9/13日、『先住民族の権利に関する国際連合宣言』日本政府は、この宣言に署名した。
・先住民族=indigenous people とindigenous peoples 『先住民族である個人』と『先住民族』 「実際には『民族』の中の個々の集団であるindigenous peopleが(権利の)主体なのだ。」
・『国連先住民族の権利』-「世界各地の先住民族の様々な権利、権限について明確に謳っている。…遺骨の返還に対する権利、差別からの自由、集団の自己決定権、自治の権利、同化を強制されない権利、など多岐に亘ってる。
・「このような国際条約に署名した国は、国際的にはその条約等を実施するための国内法の整備が義務付けられている。日本では、・・事実上拒否している。内閣官房アイヌ総合政策室アイヌ政策推進作業部会(常本照樹部会長)=日本政府は、『権利を行使する主体となるべきアイヌの集団が日本にはない。』が公式の見解。…しかし、日本がそれをしないからといってアイヌの権利がないわけではなく、アイヌの人たちは様々な権利を日本に認めさせることができる-ということなのである」 ⇒権利は勝ち取るもの・憲法97条、人類の多年の努力の成果・・・
・「コタンの権限の復活で、裁判の和解で、アイヌの遺骨管理権限の復活。  権限=一定の集団が有する権利の束

・アイヌ政策推進作業部会・常本部会長(日本政府)の考え方- 「…いまでは日常的にアイヌ語を話している人たちも存在しない、伝統的な生活習慣を維持している人も存在しないし…強い同化政策の中で民族としての集団的なまとまりが大きく損なわれている。権限が認められるようなアイヌの集団はもはや存在しない。且つ、集団の権限が認められない理由として、『欧米の法体系を継受した日本では権利主体は原則として個人』とか、『日本国憲法にはアイヌ民族や先住民族の存在を前提とする規定は設けられておらず、かえって憲法は個人主義を基本とする』などの法的根拠を挙げている。『国がその責務によって回復すべき民族の利益』は 『文化』であり、…『文化の享有』に突出した権利のみがアイヌの個人の権利であり、これが憲法上も位置付けることができるというものである」
・『アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会』=常本見解=白老町民族共生の象徴空間ウポポイのイデオロギー

・「重要なのは、国自らがコタンという集団を壊しておきながら、もはやこのような集団は存在しないから集団の権限は認められない― と国自身が主張することに正当性(正義)があるのかということである。」「アイヌの集団(コタン)が有していた土地・自然資源を日本政府が一方的に奪い取ったいう認識が、常本=日本政府の見解にはない。」
・「国のいう、宣言に定めた『権利行使の主体がない』原因が、日本の不正義にあるのであれば、この権利の主体たるアイヌの集団を復活させることが日本政府の一番の義務にならなければならない。」
・差別問題での注意点―「アイヌは和人と同じとする『平等権』の主張は、和人とアイヌが異なる法的地位に立つものであることを前提として主張されなければ、同化政策と同じにことになってしまうことに注意。・・《異なる法的地位》を制度として確立しなければ真の平等はあり得ない。アイヌの集団としての自己決定権(主権)

◎江戸時代におけるアイヌの法的地位― 「幕藩体制支配がアイヌ民族に及んでいない」『化外の民』の位置。
・幕府の同化政策は、「あくまで外に向けての形式上の『内国』化にすぎない」 ☆と著者と榎森氏は考える。
・道の作成『新北海道史』引用『江戸時代には、簡単な原則的な法律関係以外は全部アイヌの慣習法に、一任され』土地や自然資源に関しては『アイヌには、部落もしくは部落群の共同利用され、その管理処分は部落を代表して酋長の手中にあった一定の漁猟区域があって、他の団体に対して排他的な権利を持っていた』と、公的な見解?
・主権主体(漁業権、狩猟権、裁判権)としてのコタンの存在! 「・・たしかに、場所請負制のもとで、アイヌの人たちが強制連行されたり、経済的に貧窮したり、和人に奴隷のようにあつかわれたり、ということは多くの研究で明らかにされている。しかしそれでもなお各コタンは自己決定権を有する主権団体として存在し続けた―その事実が重要。」
・「幕府や松前藩は『アイヌに対する個別的直接的人身支配権や課税を実施しなかった』榎森書く。」 ☆アイヌに主権

◎明治政府によるコタンへの侵略 ― 「明治政府の行った蝦夷地の侵略=植民地政策は何の正当性もなかった。国際法無視、   『蝦夷地開拓』『対ロシア政策』『アイヌ同化政策』は三位一体の明治政府の政策。
・『お雇い外国人』ケブロンの報告書(明治5年)により、「アメリカの土地政策、先住するインデイアントライブ(集団)から土地を買い取ってはじめて開拓者に提供できる土地になるということを知っていたはずなのである。…しかし彼ら明治政府・開拓使の官吏たちはケブロンがあえて示した、『土着の法』の条件(インデイアンから連邦政府が土地を買い取る)を、全く無視し、アイヌの土地であることを知りながら多くの和人の入植を促したことになる。」
・「アイヌにとって本来自由であったサケ漁が明治政府によって一方的に禁止された。主食と交易品を奪われた」
・シカ猟の、毒矢の禁止、鑑札制度でアイヌの締め出し、和人のシカ肉缶詰工場・・・、⇒窮乏するアイヌ
・アイヌ文化の否定― 「明治政府が行った『撫育』『教化』という名の同化政策は、アイヌの人たちの生活様式および文化そのものを奪っていった。」  『家を焼く』アイヌの文化、⇒明治政府は放火と考える。

◎結論か。「私は、幕藩体制下で有していたコタンの権限やアイヌの人たちの権利が、明治政府によって奪われていくこのような過程を検討していくことこそが、今のアイヌの権限・権利回復のために重要と考えている。その過程はアイヌの集団としての法的地位が劇的に変化させられたことを意味しているが、もしその変化がそもそも合法でなければ依然としてアイヌの集団としての法的地位に変更はないはずである。そしてその変化が違法であれば、それは日本国の侵略行為でしかなく、アイヌの集団が有していた権限が正当に回復されなければならぬ。」
・〔領土の線引きと先住民との関係〕 「領土の取得は、列強国間において、そこに住む先住民から土地を買い取る権利が、その国に対して、他国に先駆けて優先的に与えられるものでしかないのだ。これが当時の国際法だ。・・・日本がロシアとの条約で蝦夷地を日本の領土としたとしても、それはあくまで日本の政府(幕府や明治政府)が、アイヌコタンとの土地の買い取り権を他国に先んじて得たということに過ぎないからだ。」

◎〔アメリカンインディアン法から学ぶこと〕  ボルト判決・・・「…この漁業権は条約によって『新しく認められた権利』ではなく、本来的にトライブが有していた権限を条約によって確認したものである。」「彼ら自身が保持していた権利」
◎≪合衆国とインディアントライブの関係≫ 「…逆に、インディアントライブという集団の権限について合衆国憲法に規定することは、インディアントライブという集団の主権を侵害する こととされた。…インディアントライブとの条約を締結して土地を取得したり…そのような権限を連邦政府でなく連邦議会の権限であると明記したのが合衆国憲法。・・・連邦議会もインデイアンから信託を受けた者として…」
・〔アイヌ個人の権利〕 「一方的な戸籍の登録によってアイヌ人たちを『日本国民』としてしまった。」「アイヌは、一方では、日本国の保護を受けることができる日本人として権利を主張できるとともに、他方では、アイヌとして日本国に対して和人とは別の権利を主張できる先住民だということが重要なのである。・・アイヌという資格やその権利が、その国の市民や国民になったということから失われるような事態は決してあってはならない。そのようなことが典型的な同化政策だということを知るべきである。」
・「…アイヌコタンという集団はこの権限(自己決定権を有し、独自の支配領域を持ったゆえに認められる権限)を過去において放棄していない、このように考えると、アイヌコタンという集団とアイヌ先住権とは、日本国憲法が制定される以前から存在していた集団であることがわかる。・・アイヌ先住権とは、憲法ができる前から権限として有していたということ。・・・歴史を明治政府が侵略する前にさかのぼり、あらためて和人社会(国家)とアイヌ社会(コタン)とのあり方をアイヌ自身が決定していくということ。」

・〔コタンは存在するのか― 現代におけるコタンの考え方〕 「現代を生きるアイヌが現代において『主権を有する権利』としてのコタンを復活・再生すること。」 「…またその後の同化政策にも耐えながら、昭和初期まで存続していた事実は、コタンという集団が『そう簡単には和人によって滅ぼされないぞ』という静かな、しかし強い抵抗の意思をもっていたのではないかと思うのである。しかも昭和初期から現代までコタンに関する調査は行われていない。文化的・血縁的なつながりや各集団の持続性などは全く調査されていないのである。したがって、これら五つ(石狩アイヌ、シュムクル、メナシクル、余市アイヌ、内浦アイヌ)の集団が、それなりに生き残っていることも否定することはできないのである。…調査・研究なしに、受け皿なしと断定するのは大きな間違いである」
・中規模なアイヌコタン、愛牛コタン+十勝太コタン=浦幌アイヌ協会⇒遺骨返還  「このように、アイヌ自身によるコタンの復活・再生はコタンの主権回復と先住権回復への基礎となるのである」

・1997年『北海道旧土人保護法』⇒『アイヌ文化振興法』  2019年5月『アイヌ新法』
◎「私は、アイヌ社会が自立して存在でき、和人社会や和人文化と対等に存立するためには、国がアイヌコタンから土地や自然資源を奪っていった不正義と向き合い、その清算の方向を全国的に議論したうえで、アイヌコタンという集団を復活・再生させることを国が援助していかねばならないと考えている。2019年厳しく問われている」
・「日本政府は、明治以降のアイヌコタンの否定とアイヌコタンの有していた土地への侵略行為を依然として是認している。是認しているがゆえに、侵略によって奪ったコタンの権限を『すでにコタンは存在しない』から認める必要はないという姿勢をくずしていない。」

                                                        2019/
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【山好き、旅好きの団塊世代日記】 当ブログは2007/1/29に運営開始いたしました!





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高田 学

Author:高田 学
少年時代は海と戯れ鎌倉育ち、故郷を離れ北海道で学業。その後東京にて工務店経営。
環境(省エネ)には特に詳しい。廃業後自由人。

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