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「限界病院」久間十議 著   読書ノート


◎舞台は、日高地方の新冠(ニイカップ)辺りに、合併して出来た人口3万人程度の市・富産別と名付ける、の市立病院。 その名はバトラー記念病院―アイヌへの扶助に貢献したキリスト教伝道師・バトラーさんの記念病院とか。 昭和の初期は、結核病棟、精神科病棟をも持つ、240病床を持つ、18科目の地域の中核病院だった。・・地域住民の悲願で、バブルの頃、地方債を起債して、鉄筋4階建ての新病棟ができた。…
・北斗医大の医局に、病院は医者の派遣を頼り切っている。
・主人公・健太郎は、東京にいたときの2倍の給与で、人生の骨休み?でこの日高の病院に赴任。
・根っからの地元のナース(札幌で看護を習って戻ってきてる)の言葉 『だから、先生、驚かないでくださいね、富産別で何があっても、土地の者はそれを教わってないだけで、言ったらちゃんと《夕陽はきれい》ってことが分かるんですから。ホントなんです。』 ☆ランボーの詩の『永遠』の夕陽のことは、もちろん土地の人は知らないんです。ということ。
・「北海道の片田舎で数年のんびり・・・、などと考えていた健太朗は、実は飛んで火にいる夏の虫だった・・
・「病院の経営は市、医療は大学医局。この二つの棲み分けが出来ていた。・・」
・市長側が、病院事務長を手先にして、病院の大改革に乗り出そうとしてきた。☆どんな大改革なんですか?知りたいです。☆そう簡単にあるかい、というのが、田舎で町立病院のいくすえを考える私です。・・
・医療部分を担ってきた北斗医大は、市長側に反発、「病院つぶし」であると…医師派遣しないぞと脅す。
・「病院の赤字分を借りてくる先が、・アイヌ関連の基金だよ。・・・アイヌ文化振興や施策関連予算ってのは国交省や文科省やその他、国の諸々の部門が予算をつけてくれるし、文化保護といろいろ名分があって、ここら辺りの地方じゃ一番潤沢に金が回ってくる部分だというんだな。…一度、基金に入れることで会計年度を越えた事業にも使えたりして、けっこう重宝に使われているらしい・・」
・北斗医大医局側の反撃、・院長が辞表。北斗医大傘化の病院AランクからBランクさらにCランク(診療所ランク)に下げてくる。 市長側元中央官僚の手ずるで、新規の医師をリクルートする方針へ…
・「先週は消化器内科、今週は皮膚科、来週には泌尿器科と精神神経科・・・医師の引き揚げ・・ バトラー病院がこれ以上おかしくなれば、リコールがほんとに成立しちゃうぜ・・・、俺の内科、おまえの外科、それに岩村先生の整形外科、この三科が最低ある限り、何とか病院の診療はかっこがつく。・・・」
・新病院長登場、東大医学部から自衛隊の中央病院からPKOでカンボジアに派遣から辞して現地で医療ボランティアそして帰国後に警察病院で院長のはずが、理想主義の硬骨漢で日高の地のバトラー病院長へ。奥さんが死んでタガが外れて、風来坊で、富産別へ?でも奥さんの墓を富産別に作るとか・・・
・この病院に誘った内科部長飯島が、北斗医大医局から召還命令…医局の命令は神の声みたいなもんだ
・その飯島しゃべる『…地域医療っていったって、俺達が勝手に思ってるほど地域の住民は喜んじゃいないしね。早い話がここ富産別においてだって、面倒な病気は苫小牧や札幌の大きな病院に行くしかない訳でね。いきおいバトラー病院は便利な診療所扱いか、あるいは年取って日常生活がおぼつかなくなったジイさんバアさんたちを、長期で面倒見てくれる療養病院のようにみられている。・・・もちろん地域には必要だよ…』・苦虫を咬みつぶしたな顔で続けた『地域住民は自分たちの都合のいいように病院を利用しているだけで、それを当たり前と考えているんだ。・・・…おまえは知らないんだよ、ここの住民の手前勝手さを。バトラー病院の今回の問題だって、結局は医師や看護師たちに大変なことは丸投げして、自分たちで、経営の尻拭いもできないし、する気もないってところに根本の原因があるんだ。要は無責任なんだよ。・・・しかしだなこの富産別じゃ誰もが誰かに責任をかぶせて、頬っかむりしているんだよ。…そう言って延々、破綻を先延ばしにしてきて…』
・地元の例のナース・大島結美、言う『…きっと失望させるのが嫌だったのです。田舎って大抵は都会の劣化版で、富産別にロマンを感じてやって来ても、たぶんその人がめにするのは、そこで姑息に根を張っているズルい人たちか、それを知ってか知らずか何もしないでずるずると日常に流される無能な人たちばっかですから』、(健太郎)『そこまで言うかねぇ』・・☆可愛いナースが、よー言うよ・・・
・「…トップとしての地位を意識しながらも、何らリーダーとしての采配を振るわない。要は赤字という現状を追認するだけで、一つも積極的な対策を講じようとしない… ・・・挙句の果てに、誰もが何の責任も取らない現在の体制が出来上がっていったのではないのか?」
・新病院長・大迫、8科目残った診療科目の医師の繋ぎ止めに、・・精力的に・・・
・「彼女たちは、すべてにぬるま湯だった頃の病院が本来の姿だと思い込んでいる・・・ 辞めてほしい年嵩の准看護師たちは辞めずに、辞められては困る人たちがどんどん辞めてゆく・・・」
・カンボジアで院長と同職場だった、美形の吉川医師の登場、真っ赤なスポーツカーで乗り付けた。・・・
・医師が減り、患者も大幅に減った。
・「院長が考えたのは、一つは医師不足の原因ともなっている新しい医師臨床研修制度を逆手にとれないかということだった。」
・「…市に戻れずに、民営化された病院に雇われることになれば、年収や年金も変わり、ひいては生涯の生活設計にまで響いてくる、ということらしかった。」
・「…民営化と市長が言い出した時点で、病院経営が富産別市にとって大変な重荷で、そうとなれば一挙に病院は止めてしまおう、と議会が考えてもおかしくないですよ」
・「時代遅れの地方政治家や既得権益をふりかざす公務員や、地域エゴまる出しの患者さんたちの意識が変わらない限り、バトラー病院は良くならない・・、 風邪だ、やれ腹を下した、とコンビニ受診の連中・・・」
・「振り返ってみれば、もう充分に俺はこの地域のエゴのようなものに振り回され、つまりは誰もが解を求めようもない難問にふりまわされているのではないのか?」
・「富産別のような田舎に引きこもって自己研鑽を怠り、十年一日の医療体制に満足していては、早晩それが地域住民の厄介となって返ってくる。」
・「富産別では人々がどのように考え、どのような医療をバトラー病院に対して望んでいるのか?そこのところを明確にしなければ、結局のところ病院の再生は覚束ないと思います。」
・「これから病院改革をするというときに腐ったミカンを同じ箱にいれておけませんよ。」
・「住民たちは自分のルーツにしたがって、それぞれの都合のいいように現実を見ている。…一枚一枚地層を引っぺがえすように観察してゆくと、曰く言い難い古層のようなものが露出してくる。この古層を無視しては・・改革は結局は薄っぺらなその場しのぎになるのではないか」
・医療コンサルの那須は言う「地方独立行政法人化をめざすべきです。・・・だが、積年の赤字がもはや住民のエゴを許さないところに来ていることを、富産別の人々は痛感すべきです。・・」
・病院改革の先導者の院長が急死、主人公・東京から骨休みに来たはずの健太郎が医院長にならざる得ない。
・旧医院長大迫の伝言・遺書より 「常に私たちに医療の原点に立ち帰ることを要求するだろう。…大迫は自分が見込んだ医師たちを共同発起人にして、医療法人を立ち上げ、バトラー記念病院を市から引き継ぐ計画を練っていた。・・かりに法人格で病院を運営するとして市から指定管理料はどうなるのかとか、建物を譲渡されるのか、無償貸与されるとするのか、その際の修繕維持費はどうなるのか、など微に入り細に入り院長は検討していた。・・」
・市側「故院長と結んでいた幾つかの合意については見直したい。」 市側、大手病院チェーン陸前会に譲渡話、しかし破綻へ。
・コンサル那須言う「・・仮にそうならば、きっと陸前会はバトラー病院の業務を縮小して、長期療養病院や老健施設を併設するつもりじゃないかな?…急性期病院にこだわった結果がバトラー病院の現状なんです。・・・・・・・老健はその受け皿として最適ですし・・・」
・結局は、縮小し、内科、外科、整形外科の主要三科目の常勤医師、他の科目へは北斗病院からアルバイト医師が…なお総合病院としての面目を保って、…・・老健施設を附設の方向へ・・・
☆人口7千人弱の町・池田町、町立病院がある、もちろん赤字。指定管理者制度で地方医療を得意?とする全国規模の医療法人に任せている。2.5億の町の交付金を与えて。建物管理・医療設備は町なので、減価償却分の1.2億円毎年赤字で累積13憶。 参考になり、色々考えさせられます。          2019/11/15                         
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【山好き、旅好きの団塊世代日記】 当ブログは2007/1/29に運営開始いたしました!





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プロフィール

高田 学

Author:高田 学
少年時代は海と戯れ鎌倉育ち、故郷を離れ北海道で学業。その後東京にて工務店経営。
環境(省エネ)には特に詳しい。廃業後自由人。

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等で 皆様の役にたてたら良いなと思うブログを書いてまいります。

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