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 「現代民主主義 思想と歴史」 権左武志 著  その⑵  読書ノート

第3章 民主主義観の転換とナショナリズムの暴走
≪第2帝政期ドイツとヴェーバーの思想≫  
・「イタリアとドイツが国民国家を創立した1870年以来、欧州のナショナリズムは大衆規模に拡大した・・」
・「ナショナリズムと自由主義は、最初から分かちがたく結合した双子の概念だった。封建的な割拠状態を克服し、言語・宗教・歴史を共有する同質的な国民を創り出すのは、何よりも自由主義者の政治課題だったからである。
・「英国の自由主義者ミルは、・・少数民族は、文明化した多数派集団に融合し、同化するのが望ましいと論じた・・」
・「少数派を非自由主義的に同化するビスマルクの同化政策は、カトリックからユダヤ人、社会主義者へと標的を変えながら、不服従の罪を背負うスケープゴートを探し求める点で一貫していた。」
・「近代の反ユダヤ主義運動は、少数民族のユダヤ人を同化しようとしたユダヤ人解放政策に対する反動として始まった。」
・「こうして大衆化したナショナリズムは、文化的同質化政策や帝国主義政策と結合するに従い、皇帝や宰相の指導者崇拝を呼び起こすことになった。
・マックス・ヴェーバー(1864-1920)、「だが、ダーウィン主義の世界観、少数民族を顧慮しない同質的国民観、対外政策への学問の従属という初期ナショナリズム論の問題は、ヴェーバーが歴史学派の方法論的反省を成し遂げた9年後に根本から克服されていくのだ。」 9年後、1904年「『社会科学と社会政策の認識の≪客観性≫』の論文を発表し、「新たな社会科学方法論を打ち立て、ドイツ・ナショナリズムを相対化」していく。⇒支配的民族を中心とする同質的国民国家観を根本的に修正した。
・ヴェーバーは「・・・支配の3類型を理念型として取り出し、ルソーの社会契約論とは異なり、支配の観点から民主主義を新たに再解釈しようとした。・・・ヴェーバー民主主義論の一面的バイアスを集中的に示すのがカリスマ的支配の類型なのだ。・・・価値自由な理念型の社会科学方法論でドイツ・ナショナリズムを一定程度相対化したにもかかわらず、指導者中心の戦略的観点から偏った民主主義観を相対化するのに成功しなかったのだ。」
・ゥ゛ェーバーは言う、ビスマルクは「1890年以後、『完全に無力な議会』と『あらゆる政治教育を受けていない国民』だけを残した。」 ビスマルク以後『統制されない官僚支配』・・・
・ヴェーバーの考え「議会の根本的任務は、第一に、調査権を行使し、官僚の秘匿する『職務上の秘密』を公開して、行政を監督すると同時に、国民を政治教育するという官僚統制の機能にある。第二に議会は、委員会活動を通じて政治家を訓練し、行政の経験を積んだ政治家を選抜するという指導者選抜の機能を持つ。…議会主義の前提条件は、英国のような二大政党制と名望家支配にあると考えられている。」
・「政治指導者がデマゴギーを用いて大衆の信用を得て、権力を獲得する仕方を『カエサル主義』と呼び、カエサル主義の手段こそ『人民投票』または軍事的成功への『拍手喝采』だという。・・人民投票による指導者の選抜は、議会主義による選抜と対立関係にあると指摘する。議会主義的選抜の利点は、デマゴーグの台頭を防ぎ、後継者交代を円滑に行う点にあるのに対し、人民投票的選抜の欠点は、大衆の情緒的動機を強め、『街頭の民主主義』(☆悪口らしい)を解き放つ点にある。ドイツ国民の政治的成熟は、こうした『無計画な集団発狂的情緒的作用』への反応で試されるだろう」 ☆著者は、ドイツは成熟してないから、ナチスになったと言ってるらしい?
・≪大統領制と指導者民主主義≫- 憲法制定国民議会・・  cf 1919年『職業としての政治』(本あり)の講演、等
・「(ドイツの歴史家)モムゼンは、カリスマ的支配のヴェーバー理論が、ドイツ人民を指導者ヒトラーに自発的に拍手喝采させる上で部分的に貢献したと断定した。」
・「ドイツ・ナショナリズムの右旋回に続いて見られたカトリシズムとナショナリズムの結合は、第一次世界大戦が勃発し、戦時ナショナリズムが高揚すると頂点に達した。・・ヴェーバーの弟子の世代のカール・シュッミットに言及
・シュッミットが国民社会主義(ナチス)の信奉者へと転向した主要因・・実定法を超えた価値への信仰を失い、多数者の意志は常に正しいという純粋民主主義の神話に呪縛されるならば、民主主義は指導者の決定に喝采するだけの人民投票的民主主義に還元されてしまうのだ。・・事実上の権力関係による憲法規範の失効を『国民的革命』と呼んで是認した。従って、ヴェーバーとシュミットは、自然法規範の法創造作用を理解できず、大統領制による体制転換に警戒しなかった点で誤りを犯したが、カトリック教会の階層制とドイツ・ナショナリズムの同質的国民観を無批判に受け入れた点は、シュミットに特有の欠陥だった。」
≪民族自決権の適用とその帰結≫・  
・民族自決権の概念 ①居住地域(属地原理)または個人の選択権(個人原理)による民族の文化的自治を要求する
 ②民族の分離と独立を要求する集合体の権利―レーニンの用法
・ヒトラーの世界観。ロシア革命やドイツ革命はユダヤ人の国際的陰謀、反ユダヤ主義を反マルクス主義と融合、『ユダヤ・ボルシェヴイズム』の絶滅を、ロシアに生存権を拡大し手に入れドイツ国民を救済する。・・保守派エリートの協力を得て・・、独裁体制の構築。 ≪民族自決権の濫用と倒錯≫-独裁者ヒトラーは、レーニンが定式化し、ウィルソンが宣伝した民族自決権の理念を、主権回復と大ドイツの目標を達成する手段として濫用し、現状修正の手段として単独行動を正当化した。・・1936年、国内の不満を解消するため、非武装地帯のラインランドにドイツ軍を進駐させ、3/12日の人民投票で98.8%という圧倒的多数の支持を獲得した。2年後オーストリア併合を宣言し、4/20の人民投票で99.7%という両国民の圧倒的支持を得て、≪大ドイツ≫という民族自決権の目標を達成した。…1933年10月以来、ナショナリズムの対外拡張手段としても指導者への喝采獲得手段としても活用されたのが、議会選挙に代わる人民投票の手段であり、人民投票で民主主義が成立するかのような擬制だった。・・自決権の倒錯現象、・・ 多数派の意志に強制的に同質化する・・
・「国民国家イデオロギーの同質化欲求が行き着いた帰結が、ナチスのユダヤ人絶滅政策という自決権の倒錯だったとすれば、純粋民主主義イデオロギーの同質化欲求が生み出した帰結こそ、ナチスやボリシェヴィキの指導者崇拝という民主主義の倒錯だった。」
第4章≪民主主義の再検討とナショナリズムの封じ込め≫
・ハンナ・アレント主著『全体主義の起源』にて、全体主義批判を展開した。 「・・プロパガンダは、疑似科学的予言・・指導者の無謬性を大衆に信じ込ませ、・・ユダヤ人やトロッキストの世界陰謀説の虚構の教義を創り出し・・
・「…最後にアレントは、革命政党の一党独裁に対し、評議会制をモデルとする反全体主義的民主主義を構想する。
 …アレントも、レーニン主義の帰結を見通したローザ・ルクセンブルクの評議会制民主主義の伝統に連なっていると言える。」 
・その後 ≪ユルゲン・ハーバーマスの全体主義批判≫、≪ジョゼフ・A・シュムペーターの競争的民主主義論≫、≪ロバート・A・ダールの多元主義的民主主義論とその批判≫、≪第2次世界大戦の戦後処理と自決権の拒否≫、≪戦後の植民地独立運動と自決権の受容≫、…「20世紀の近代ナショナリズムは、帝国主義と結合すれば、抑圧と侵略のシンボルを意味し、脱植民地化運動と結合すれば、逆に自由と独立のシンボルを意味するという相反する作用を及ぼしと多と言える。・嫌悪や憎悪の対象にもなれば、称賛と願望の対象にもなるというアンビバレントの性格を持ったのだ。」 
・≪東西冷戦と自決権の侵害≫・・「ソ連のアフガン侵攻は、東欧の衛星国以外でも政府・体制選択の自決権を侵害したため、共産主義理念の信用を失墜させた。だが、謀略機関を利用して政府・体制選択の自決権を侵害する点では、合衆国も劣らなかった。」
・≪冷戦終結と自決権の回帰≫・・「冷戦終結の三段階を振り返ると、途上国撤退と東欧自由化は、人民が政府・体制を選択するウィルソンの自治権の承認を、ドイツ再統一とソ連の解体は、民族が分離・統一して独立するレーニンの自決権の承認を意味していた。従って、東西冷戦の終結は、二重の意味における民族自決権の勝利と回帰を意味したと言える。」
終章 ≪冷戦終結後の民主主義とナショナリズム≫
・「自決権や指導力の擬制が、分裂した現実を覆い隠す役割を果たすとすれば、人民投票こそ、多数決の擬制により擬制と現実とのギャップを媒介するため考え出された純粋民主主義の政治手法である。・・・治者と被治者が一致する純粋民主主義というルソー的神話こそ、・分裂した現実を覆い隠し、指導者の提案へ喝采する人民投票の採用を正当化するイデオロギーである。」 
・ヴェーバーがワイマール憲法に導入した大統領直接公選制や人民請願という人民投票的規定が、議会制を葬り去る体制転換の手段としてカリスマ要求者により濫用された・・だからこそ、直接公選制でなく議会選出制とした。」
・「全体主義の時代経験から真剣に学ぼうとすれば、国民の同質性を前提できない現代の多元的社会では、多数支配型でなく、コンセンサス型の民主主義モデルを採用するのが望ましいと結論できる。」 
・『新しい時代の開幕は、既存の現実自体がいかなるものであったかについての意識を闘い取ることのなかにある。』 ラストです。ヘーゲル門下のラサールの言葉。 【意識を闘い取る】が著者の意気込みか?

☆学者という自負心から、『真理の価値を認めない者に、科学は何も提供できない』の言葉を読者に贈る、とさ。

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【山好き、旅好きの団塊世代日記】 当ブログは2007/1/29に運営開始いたしました!





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プロフィール

高田 学

Author:高田 学
少年時代は海と戯れ鎌倉育ち、故郷を離れ北海道で学業。その後東京にて工務店経営。
環境(省エネ)には特に詳しい。廃業後自由人。

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