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「社会の変え方」 泉 房穂 著        読書ノート

◎表紙帯― 日本の政治をあきらめていたすべての人へ  障害のある弟と過ごした子ども時代―。原点は、冷たい社会への復讐だった。
・「私が生まれ育った明石市の二見町は、瀬戸内海に面した小さな漁師町。」それなりの貧乏な漁師の子。4っつ下の弟が障害をともなって生まれる。1967年のこと。
・当時日本には≪優生保護法≫、兵庫県は『不幸な子どもの生まれない県民運動』、差別施策の率先。
「医師は当然のように弟を『生まれなかったことにしよう』と言ったのです。兵庫県の運動は1972年まで、優生保護法は1996年まで続きました。」 母は「・・堪え切れず、『どうか命だけは』と泣き崩れ、『家に連れて帰りたい』と懇願したそうです。」 病院『障害が残ってもいいのか?』と問い質しました。
・≪少数派を無視する社会≫―「同じ社会に生きているのに、多数は居心地が良くても、もう一方の少数派はしんどい思いをしている。両方の立場を行き来していた者として、こんないびつな社会のあの方が、まともだとは到底思えなかったのです。」
・≪弟が小学校へ通うために誓約書に書かされた2つの条件≫―1っつ『何があっても行政を訴えません』 もう一つ『送り迎えは家族が責任を持ちます』
・≪本人の幸せは本人が決めると知った≫― 『弟のため』と言いながら、本当のところは、自分が周りから笑われたくなかっただけなのかもしれない。…たとえ周りに迷惑をかけるかもしれなくとも、兄として、とことん弟の味方であるべきだったのに。」
・≪2人分(弟の分)、稼ぐために東大へ≫、「学生、ほとんどが現状維持的思考の持ち主。例外は、駒場寮、寮委員長になる。『自分たちのことは自分たちで決めよう』キャッチコピー、長らく民青系・共産党系であったが
・「大学に行ってさらに強く感じたのは、周りの者の無関心、現状追認の空気感。そして誰かが代わりに闘ってくれることもなく、誰かが世の中を良くしてくれることにも期待しがたい。気づいたものが、自らがそれを正し、世の中を良くしていくしかないであろうという冷徹な現実。」
・≪テレビ局時代に感じた限界≫≪『人間のための政治は勝つ』。恩師、石井紘基さんとの出会い≫、師に司法試験を勧められ、4回目の挑戦で合格、弁護士へ
・≪六法全書を初めて見たとき、赤ペン入れて直してやろうと思った≫―
・≪弁護士としてたどりついたのは、世の中の根本的な問題≫―数多くの悲しみや苦しさに出会い、ともに悔しさを噛みしめる中で、いわゆる従来的な弁護士の限界というものを改めて思い知らされました。…この世の中のそもそものしくみを変えなければ、問題を根本的に解決することなどできない・」
・≪正義のために刺された遺志(石井紘基)を引き継ぎ、国会へ≫―刺され、国会質問の書類が奪われ、見つかっていない。闇に葬られた・・・。石井さんの無念をはらす、国会議員になる。40歳2003年のとき。
・≪党や選挙区に関係なく、他のみんなが見捨てても≫― 議員立法にとりかかる。が、2005年郵政解散選挙で落選。
・2011年明石市長選挙、69票差、市長へ「支持母体は市民だけです。でも、それで十分だと思ってます。」

§1 ≪子どもの町≫から始まる好循環―なぜ人が集まり、経済も上向くのか?―
・子ども施策『5つの無料化』①18歳までの医療費 ②第2子以降の保育料 ③中学校の給食費 ④公共施設の遊び場 ⑤「おむつ定期便」(0歳児見守り訪問)
・≪寄り添う施策≫①養育費の立替払&親子の面会交流支援 ②児童扶養手当の毎月支給 ③戸籍の無い子供の支援 ④子ども食堂をすべての小学校区で開催 ⑤児童相談所の改革(第3者チェック等)
 「ほとんどが日本以外の他の国ではあたりまえに実施」
◎行政には≪お上意識≫≪横並び意識≫≪前例主義≫が染み着いている。
・≪子どもに冷たい社会に、未来はない≫・・子どもから好循環が生まれ、回り始める。
・「安心して子育てができるよう、子育ての負担を軽減する政策があれば選ばれる。こうして明石市は『暮らす』『育てる』に特化しました。」・・「人はもしものときに安心がないと、お金だけでは動きません」
・「最初に『事業者』を支援するのではなく、まずは『子ども』から支援する。『企業』ではなく消費者である「市民」の側からこそ経済が回り、持続可能な好循環につながります。」
・≪「無駄の象徴」になりかけた再開発を「まちづくりの象徴」に変えた≫≪「本のまち」が人を育む≫
・≪おむつの無料配布で孤立防止≫≪最大のポイントは「所得制限なし」。見るべきは、親でなく子ども自身≫・・「『子どもの未来』は『社会の未来』そのものです。」≪スタートは「経済」でなく「人」≫

§2≪「お金の不安」と「もしもの不安」に向き合う―まちのみんなで「寄り添う」支援≫
・≪誰も取り残さず、あれも、これも≫・・「必要なのは『子育ての社会化』です。
・≪不条理を放置しない「離婚前後の養育支援」≫・・「明石市では、別れた親とその子どもが面会する場に、市の職員が立ち会うようにしました。・・」
・≪お金を渡すだけが仕事ではない「児童扶養手当の毎月支給」≫・・「ポイントは早期、総合、継続支援です。子ども本人に100%必ず会う『乳幼児全数面接』も実施しています。・・子どものためのお金は、「子どもの顔を確認できるまで渡せない」とのスタンスで、100%会うことを続けている。」
・≪人数の問題ではない「戸籍のない子どもの支援」≫≪やってるフリで終わらせない「子ども食堂・」≫
・≪まちの迷惑ではなく、まちの誇り「児童相談所の設置と改革」≫
・≪面倒は「社会がみて」あたりまえ≫(家庭でなく) 「行政の本気が伝われば、市民はまちづくりを応援してくれる。」
§3≪「お金」と「組織」の改革―明石でできたことは、全国でもできる≫
・(前書き)「『既得権益にメスを入れて、得られた財源で子ども施策を遂行』することは、≪権限的」には
何も難しいことではありません。≪政治的≫には、既得権益側の怒りを買い、不祥事をでっち上げられたりもしますが、それも市民・有権者の応援があれば大丈夫です。」
・≪予算を2倍、人員を3倍に。「金がない」「人が足りない」はウソ≫(子ども予算)、
・≪「誰かに我慢を強いる」その発想が間違っていた≫・・「既得権にとらわれず、抜本的な予算のシフトを断行し、他の分野から新たな予算を得るべきではと・・」 「発想の転換・・」
・≪トップが腹をくくればいい≫・「自治体のトップの大きな権限「政策の方針決定権」「予算編成権」「人事権」 ≪「決めたら終わり」の権限を使うか、使わないか」≫≪選挙の在り方は、当選後の政治の在り方を左右する≫≪無駄の削減はどうやったのか≫「外部のコンサル業者・・」
・≪人事をどう変えたのか?≫≪「適時」「適材」「適所」の組織をつくる≫≪弁護士職員の採用≫
・≪司法と福祉をつなぐのが役所≫・社会福祉士 ≪汎用性と専門性を組み合わせ、チームで機能する≫
・≪「縦割り」と「申請主義」を乗り越える≫ ≪果たすべき責務≫・公約・・

§4≪誰かの困りごとをみんなのセーフティネットに変える≫
・前文「・・『障害があるからあきらめろ』と言われる側だった経緯もあり、少数者に≪あきらめ≫を強いる政治であきらめたくはない。」
・≪「子ども」にやさしいまちは「すべての人」にやさしいまち≫≪生きづらさの原因は「本人」ではなく「社会」の側にある≫・「・そんな完璧でもない人間が、「あちら側」と「こちら側」に線を引いて仲間外れにしたがるのです。」 「市では、段差をなくすお店に税金で全額助成を行うことにしました。」
・≪「犯罪被害者支援」は、「市民みんな」のセーフティネット≫―「弁護士時代、数々の冷たい現実を目の当たりしてきました。法や制度やしくみが間違っているのです。どんな状況に置かれても大丈夫と言える、安心な世の中にしたい。冷たい社会を変えて見せる。・・市では2014年『犯罪被害者等の支援に関する条例』を改正しました。」
・≪認知症になっても大丈夫なまち≫―2022年『認知症あんしんまちづくり条例』制定
・≪実はみんな、少数派に属している≫―「自分が多数派、いわゆる周りと同じ側にいると信じたい。同調圧力の強い日本の社会ですから、周囲に合わせ、つい本来の気持ちを押さえてしまう。そんな生きづらい社会では、多数派を正しいと思い込み、少数派を排除する風潮が強まりがちです。…今の世の中は『9割ぐらいの人がハッピーなら、1割ぐらい仕方ない』という多数決の価値観が主流になりがちですが、私にはそうは思えません。歳を重ねれば、・・誰もがいつか少数派になります。誰かを排除していく社会では、自分も排除されることになるのです。だからこそ・・生きづらさを覚える冷たい社会でなく、・・」
・≪人は社会的意義だけでは動かない「障害者配慮条例」の背景≫―段差などの『物理的な障壁』と、偏見・無関心・思い込み等の『意識の壁』などの多くの障害が存在。2016年国・「障害者差別解消法」。内閣府『障害の社会モデル』・・「周りのひとり一人は悪い人ではないのに、慣習や制度が少数派を排除することを前提にしていたのです。障害は社会が作り出している。子どものころからずっと怒りを覚えて続けてきました。(☆制定の背景?) 2015年全国初「手話言語・障害者コミュニケーション条例」、国の差別解消法に合わせ、市で「障害者配慮条例」・・配慮する店が数十店を超え、逆に配慮が当たり前に変わり・・」
・≪当事者とともに、まちの風景を変えていく≫―「障害者への配慮を促進すれば、まちがやさしくなる。みんなが幸せになることを実感し、・・狙ったのは、思いや情報の共有だけでなく、現実的な効果です。」
・≪市民が動かした「優生保護法被害者の支援条例」≫
・≪ありのままが、あたりまえのまち「ファミリーシップ制度」≫―「市では、パートナー同士の関係と共に、全国で初めて一緒暮らす子どもも合わせて関係性を証明する「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」開始。
・「条例づくりは、まちづくりの有効な手段です。条例をつくる過程で理念をしっかり各現場に落とし込む。その中での気づきを条文に反映させていく。」 
・「『インクルーシブ条例』は、まちづくりのシンボル的な条例です。これまでの明石のまちづくりを明文化し、明石のまちの未来へとつなぐ大切な規定。多くの市民が共感を持ちながら、まちづくりが進むことを強く願う立場です。…少数の困りごとを解決することは、多数の人々のセーフティネットになります。障害者、犯罪被害者、無戸籍者、ひとり親、LGBTQ+、子ども、女性・・・そういった「マイノリティ」とされる人たちをすくい上げ、・世界の主流であるインクルーシブの視点は、この世の中を「少数派と多数派」に区別して分断や排除を強制的に持ち込む発想と異なります。冷たい社会を変えていく。行政だけでなく、私たち一人一人にも託されています。」
§5≪コロナ禍で見えた自治体のあり方≫
・前文「『税金』とは、国民から預かっているお金だ。それに『知恵』と『汗』の付加価値をつけて≪国民に戻す≫のが、政治の役割だ。」

§6≪望ましい政治に変えるために私たちは何をすればいいのか?≫
・「口を開けば政治家、学者、マスコミは『金がない』『仕方がない』と、私たちをあきらめさせようとしてきます。『どうせ何を言っても変わらない』。そんなマスメディアを駆使したネガテイブキャンペーンに騙されてはいけません。・・政治は変えられるし、変わります。」 exパブリックコメント・・
・≪「お上意識」を消し去る≫―「私は『三つの発想の転換』を掲げ、改革を広めてきた。①上から ②一律
 ③これまでどおり の時代はもうとっくの昔に終わりました。…上からの態度をとる行政目線にひるむことなく、私たち市民から。あなたのまちから、政治や行政は動かせます。日本の狭い範囲でしか通用しない常識とされていること、間違ったあたりまえを疑う。視野を世界に広げ、思い込みから脱却する。私たちの声で、もっと期待できる体制に変えていけばいいのです。」
・≪「横並び意識」を変える≫・・・≪「前例主義」からの脱却≫―「今、目の前で市民が困っているなら、躊躇することなく変えればいいのです。 『発想の転換』が必要です。
・≪変わらないのは、私たちの責任≫―「既得権益を守る仕組みは強固です。何の行動も起こさずに文句をいっているだけで変わるほど甘くはありません。変わらないのは行動しない私たちの責任でもある。私たちが変えていくしかないのです。」
◎おわりに 「私には、まだまだやるべきことがたくさんある。冷たい社会をやさしい社会に変えるのが私の使命だ。」
☆この本に、感銘を受けた人は、「政治はケンカだ」泉房雄 著 聞き手鮫島浩 の本(講談社)も是非お勧めです。具体的に種々の相手に対してどう考え行動していったかが分かります。
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こんにちは!

【山好き、旅好きの団塊世代日記】 当ブログは2007/1/29に運営開始いたしました!





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プロフィール

高田 学

Author:高田 学
少年時代は海と戯れ鎌倉育ち、故郷を離れ北海道で学業。その後東京にて工務店経営。
環境(省エネ)には特に詳しい。廃業後自由人。

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